北京のバンド。1989年7月、天安門事件から1ヶ月が経ち、全総話劇団のメンバー李季・蒋温華（Dr）・zhan松の仕事が無くなったため、秦［王奇］（G）・秦勇（Vo）・王勇（Key）らと一緒にバンドを組んで遊んだのが、結成のきっかけであった。のち、1989楽隊と名乗ったが、天安門事件とはまったく関係がなく、ただ1989年に結成したからであった。同月、星光酒［ﾛ巴]で行われたPARTYに参加。思ったよりお金が稼げることで、多くのPARTYに参加するようになる。しかし、この頃はオリジナル作品がなかった。

　8月には、臧天朔（Key）と李力（B）がメンバーに加わった。その後、アメリカ人の金大勇や魯張生も加入した。臧天朔は次々とオリジナル作品を創作していく。

　1990年2月には、臧天朔の企画で“90現代音楽演唱会”が北京の首都体育館で開かれ、1989楽隊も参加し、この時、「五陰熾盛」等を演奏した。ボーカルは臧天朔・秦［王奇］・秦勇らが交代で務め、大好評となる。

1995年頃の1989楽隊
左から：秦［王奇］（G）・胡之良（Sax）・臧天朔（Vo&Key）・劉君利（B）・馬禾（Dr）
（『告別的揺滾』より）

　しかし、バンド内での音楽の方向性は定まっていなかった。リーダー的存在の李季と秦［王奇］はヘビーメタルをやりたかったし、臧天朔は自分の進む道を決して変えようとしなかった。そのため、バンドは“90現代音楽演唱会”以降解散状態となる。そこで、メンバーは相談を重ね、再びこのバンドで活動していくことを決める。5月には、“深［土川］之春”コンサートに黒豹楽隊・呼吸楽隊・眼鏡蛇楽隊・常寛とともに参加した。

　バンドは元々友達同士で組んだバンドであったため、メンバーも固定していなかった。初期のメンバーであるzhan松・王勇はすでに脱退、“90現代音楽演唱会”前後には蒋温華・秦［王奇］・秦勇も脱退、このコンサートでは2人のアメリカ人がドラムとギターで参加した。これは、すべて臧天朔によって為されたものだった。つまり、この頃から、1989楽隊は臧天朔のバンドとなっていった。のちに、胡之良（Sax）・張永光（Dｒ）らも参加する。

　1991年12月には山西省太原で超載楽隊・唐朝楽隊・呼吸楽隊・眼鏡蛇楽隊等のバンドと共演する。

　1992年初には比較的メンバーが落ち着き、臧天朔（Vo&Key）・程進（Dr）・李力（B）・艾迪（サポートG）であった。9月18日、秦皇島でアートフィルム『孩子 太陽 世界』の撮影に参加した。そしてこのフィルムに関連して「説説」をレコーディングしたが1993年になり、『中国大揺滾 - 献給国際減災十年』に収録され、許可も無く販売されてしまう。同年、胡之良（Sax）が加入した。

1990年代前半の1989楽隊での臧天朔
（写真：書籍『揺滾夢尋』）

　1993年2月には、ドイツ・ベルリンで行われた“中国前衛文化月間”に崔健らとともに参加、そしてドイツの4都市を巡演した。1993年3月には、ミュージシャンの生活を描いたテレビドラマ『海馬歌舞庁』にメンバーが役者として参加した。4月24、25日には、北京の首都体育館で黒豹楽隊と“臨終關懐（臨終まで配慮する）”合同チャリティコンサートを開く。この時、ギターは寇善立（米）であった。

　1994年、馬禾（Dr）が加入した。

　1995年、劉君利（B）が加入する。同年、臧天朔名義で1stアルバム『我這十年』を発売した。アルバムにはクレジットされていないが、バックバンドは1989楽隊である。1996年、文智涌（トランペット）が加入する。11月9・10日には、北京の首都体育館で開かれた“中国流行楽十年回顧”大型コンサートに参加した。1997年には、單曉帆（Dr）が加入した。同年、貝貝（Per）が加入した。

　1998年夏には長春でライブやサイン会、そして8月28日には、北京の頤和体育広場で行われた“災区賑災義演（チャリティー）”活動に崔健（29日）、AGAIN楽隊、麥田守望者楽隊らとともに参加した。

1998年8月18日、吉林省長春で行われた1989楽隊のコンサートより
左から：ERIC（G）・胡之良（Sax）・文智涌（トランペット）
（撮影：YIREN）

　1999年、1989楽隊は解散となり、11年の活動に幕を閉じた。

　2003年11月、中国ロック初期の曲を集めたオムニバス『吶喊　為了中国曾経的揺滾』が発売となり、そこに「五陰熾盛」が収録された。