1987年末、軍隊に入隊、陝西省軍区で文芸兵となる。軍隊の中でも、彼はギターの練習を怠らなく、毎日8時間から10時間は練習していた。1988年、ロックを初めて聴き、そこで大きな衝撃を受け、ミュージシャンになることを心に誓った。

　1990年末、軍隊から復員し、中学校の音楽教師を任せられる。ただ、彼は1度も学校へは行かず、プロのミュージシャンとなり、西安地区では名の知れたギターリストの1人となった。

　1991年、借金をして高価なエレキギターを購入し、福建省のDISCOに赴いて、バックバンドの一員となりお金を稼いだ。しかし、個性を殺し、機械のような演奏をしなければならないことに耐えられず、2ヶ月後には西安に戻る。この頃は、収入もなく、かなり苦しい生活を強いられ、家で音楽を聴きながらギターの練習に励んだ。その間に、「Don't Cry Baby（のちに執着と改名）」、「誇父」、「流浪」、「童話時代」などを創作する。これらの歌詞には生活や社会的圧力を受けながらも音楽に対して夢を追い求める姿が見受けられる。

2002年写真
3rdアルバムの歌詞カードより

　1994年10月になり上京し、紅星生産社に4曲入りDEMOを持ちこみ、そこで認められ、翌11月には「両天」と「青鳥」をレコーディングした。

　1995年4月に紅星生産社と正式に契約する。この時から許巍と名乗るようになる。9月、オムニバス『紅星壹号』に「両天」を発表した。「両天」はロック界だけでなく、各界から高い評価を受けた。特に詞が注目され、のちに『中国当代詩歌文選』に入選した。中国流行歌壇からは、彼と崔健しか入選していない。

　1997年4月には1stアルバム『在別処』を発表する。スタイルは、グランジやフォークを中心としたものであった。5月5日、深［土川］の深［土川］大学で行われた“九七揺滾慶典”に参加した。

　1998年元旦のラジオ「新音楽雑誌」（張有待がDJ）では、『在別処』が1997年度最優秀アルバム賞となり、彼の名前が全国に知れ渡った。4月、北京のDISCO NASAで行われたKurt Cobain追悼ライブに参加した。12月31日、DISCO NASAで行われた“在路上”北京の大学99新年ロックパーティーに参加したが、やがて諸処の事情により、表立った音楽活動をしなくなった。1999年3月には、『紅星六号』に「執着」を発表するなど細々と活動を行っていたが、この頃は西安へ帰郷して活動を休止していた。

1stアルバムの頃
（紅星生産社のサイトより）

　2000年4月には、深[土川]でライブを行う。夏になり、オムニバス『超高壓 2000伏』に2ndアルバムの2曲が先行収録された。11月には、2ndアルバム『那一年』が発売となった。様々な問題を抱えながらの発売となったが、このアルバムは10日で10万本の売上げとなった。

　彼には、多くの熱狂的なファンがいて、この人気振りは「魔岩三傑」以来とも言える。特に彼のギターをコピーするギター少年は多い。それは、彼の曲は、グランジだけではなく、ハードロック、フォークソングに至るまで幅広い音楽性を持っているためであろう。

　2001年には、葉［艸/倍］の2ndアルバムのプロデュースを務めた。6月2日、西安の西安体育館で行われた“存在西安揺滾演唱会”に出演した。同年後半、ベストアルバム『我只有両天』が発売となった。

1stアルバムの頃
（紅星生産社のサイトより）

　2003年1月に行われた、第10回中国歌曲排行榜表彰式で、『時光・漫歩』が最優秀アルバム、年度15大金曲のほか、最優秀創作歌手に選ばれた。7月31日、重慶のbobos酒廊でライブを行った。9月25日、河北省の廊坊東方大学城で行われた“楽躍欲視”野外コンサートに参加した。12月末から2004年初にかけて、深［土川］で行われた“2003深［土川］歓楽谷流行音楽節”に出演した。

　2004年4月10日、西安の未央湖遊楽場でライブを行った。5月13日、上海の同済大学で行われた“2004上海之春国際音楽節−−校園音楽先鋒全国邀請賽決賽”にゲスト出演した。12月6日、北京兵馬司劇場で“絶版青春”コンサートを開いたほか、4thアルバム『毎一刻都是斬新的』を発表した。

　2005年3月、『在別処』と『那一年』を1つにしたBOX『珍蔵許巍作品全集1995-2000』が発売となった。5月3日、西安の陝西紅河谷森林公園で行われた“紅河谷現代音楽節”に参加した。5月、オムニバス『礼物』に曲を発表したほか、「礼物」を合唱した。8月5日午前6時から午後10時まで、北京音楽台（ラジオ）で「許巍音楽日」と題して、1日許巍の音楽やインタビューなどが放送された。8月13日には、北京工人体育館で“絶版青春”コンサートを開いた。北京でのロックシンガーの単独コンサートでは、崔健以来の出来事である。10月1日、深[土川]大梅沙太陽広場で行われた“第四届深[土川]黄金海岸旅遊節曁首届深[土川]百事可楽沙灘音楽節”に参加した。10月、8月13日のコンサートがライブアルバムとして発売された。12月24日、天津市体育中心で“絶版青春”クリスマスコンサートを開いた。

　2006年2月、過去にアーティストに提供した曲を自ら歌ったアルバム『在路上...』が発売となった。5月17日、西安の可口可楽体育場で“絶版青春”コンサートを開いた。5月19日、昆明の昆明世博園で行われた“首届春城揺滾音楽節曁世博狂歓夜”に出演した。5月26日、哈爾濱の哈爾濱国際会展中心体育館で行われた“揺滾・経典中国-哈爾濱[口卑]酒演唱会”に参加した。6月17日、河北省唐山の唐山市体育中心田径場で行われた“唐山[口卑]酒揺滾演唱会”に参加した。7月22日、深［土川］の世界之窗で行われた“昨天-今天--南中国揺滾音楽節”に参加した。8月17日、人民大会堂で“夏日漫歩”コンサートを開いた。9月1日、蘭州の蘭州体育館で行われた“2006巓峰音楽・精彩蘭州演唱会”に参加した。9月15日、台湾で『曽経的［ｲ尓］』が発売となった。10月5日、広東省増城市増城広場で行われた“首届中国（増城）揺滾&[口卑]酒狂歓節曁第五届新塘国際牛仔服装節”に参加した。10月7日、北京国際雕塑公園北園で行われた“2006北京首届揺滾[口卑]酒節”に参加した。

　2007年5月26日、成都の人民公園でライブを行った。7月22日、内モンゴル自治区鄂爾多斯成吉思汗旅遊区で行われた“首届鄂爾多斯草原揺滾音楽会”に参加した。10月5日、上海の同楽坊で行われた“NOTCH07 上海站”に参加した。12月、許巍の人気を反映して、ボサノバ風にアレンジしたカバーアルバム『反転許巍』が発売となった。これまでロック関連のカバーアルバムは、崔健（複数アーティストによるオムニバス）しかないため、崔健の人気に並んだと言っても過言ではない。

　2008年5月3日、四川省成都市温江区の国色天郷楽園鷺営地で行われた“2008橘子音楽節”に参加した。5月22日、星光現場音楽庁で行われた超越那一天”[シ文]川大地震被災者チャリティライブに参加した。9月21日、瀋陽の瀋陽龍脈後海公園で行われた“2008瀋陽後海音楽節”に参加した。9月30日、重慶市大足県龍水湖で行われた“龍水湖畔 国際露営音楽節”に参加した。10月15日、5thアルバム『愛如少年』が発売となった。10月18日、重慶の大田湾体育館でコンサートを開いた。

　2009年3月、上海芸風音楽文化伝播公司に移籍してからのベストアルバム『今天。』が発売となった。4月10日、北京工人体育館で“今天”コンサートを開いた。5月9日、上海の上海大舞台で“今天”コンサートを開いた。5月28日、杭州の西湖新天地大草坪で行われた“2009杭州・西湖現代音楽節”に参加した。8月29日、広州の広州体育館で“今天”コンサートを開いた。10月24日、長沙で行われた“麓山揺滾音楽節”に参加した。10月25日、西安の陝西省体育場でコンサートを開いた。11月1日、上海の大寧国際商業広場で行われた“09中国上海国際芸術節 - 大寧音楽季”に参加した。11月21日、河南省鄭州のCBD内環国際会展中心で“温暖今天”許巍・鄭鈞コンサートを開いた。11月27日、陝西省渭南の渭南体育館でコンサートを開いた。11月29日、陝西省咸陽の彩虹体育館でコンサートを開いた。12月18日、杭州の黄龍体育館でコンサートを開いた。

　これだけ長い期間、第一線で活躍し、人気の面でも商業的（コンサートの回数・アルバム発売枚数等）にも成功したのは、許巍だけである。その時代ごとにスタイルを少しづつ変化させながら、リスナーの心を捉える歌詞を書き続けていることが、他のロックアーティストではできなかった点である。今後も、中国ロック・流行音楽界を代表するアーティストとして、活動し続けるであろう。